『田園の詩』NO.50  「宅地分譲」 (1996.7.23)



 大分県下では、過疎対策の一環として、宅地を造成して分譲する町村が目立って
きました。私の住む山香町でも、20数区画造成して低価格で販売しています。

 いずれの町村も定住促進を計ることが目的なので、転売禁止、三年以内に住宅
建築などの条件が付いていますが、土地の広さと値段の安さは、都会では考えら
れない位です。

 新聞などで、各町村の分譲地の写真が載っているのを見ると、そのほとんどが
一区画の宅地が階段状に並んで集合しているような、都会でもよく見かけるスタ
イルをしています。これでは、前後左右どこかが隣家と接することになります。
いくら広いといっても、お互いに気にしながら生活しなければなりません。

 私の経験からして、都会での住みにくさの一つは、隣家との距離がないことで
した。買い物など、田舎では不便なことはいっぱいありますが、都会では身近な
生活圏の中でほとんど済ますことができて大変便利です。しかし、これ以上入り
込んでほしくない距離を越えて、隣家と接していました。

 現在、私は、幸か不幸か、犬が少々吠えても気にしなくてもよい山里の家に住
んでいます。時折、町役場から頼まれて、田舎暮らしをしたいという人のために、
空き家探しを手伝ったりします。彼らは「隣家と離れていること」という条件を
必ずいいます。私は「さもありなん」と心の中でうなづくのです。


     
     ビーグルは6月から、子猫は9月から、「野良」から昇格して我が家の仲間に
      なりました。現在、犬2匹、猫5匹です。 (08.10写)



 今の造成の仕方は、まず原野や荒れ地を完全に切り開いてから、宅地を並べる
ように仕切っていきます。これでは、いくら広くて安くても、彼らの心情を満足は
させないでしょう。

 もう少し工夫を凝らして、たとえ土地は多めにとっても、木や竹林などをある程度
残し、その中に宅地を散在させるようにしたら、田舎らしい分譲地になると思うので
すが…。

 こんな分譲地なら私は胸を張って宣伝します。我が町の、今売出し中のは、残念
ながら、田舎暮らしを真剣に望んでいる人に見せたくはありません。
                          (住職・筆工)

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